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2025-09-29

外部のプロ活用時の宿命的な難しさ

企業は自社が弱い分野の課題解決に際して、外部のプロにサポートを依頼することがあります。外部のコンサルタントに何かを依頼するのもその一例です。

しかし、企業(その経営者や関係者)が社外のプロに頼り、そのプロの力量を選定・評価し、活用していくことは簡単ではありません。そこには「宿命的な難しさ」が存在します。

宿命ですから、逃れることはできません。しかし、自覚したうえで幾つかの方策を組み合わせることで難しさを低減することは可能です。私は自分自身が企業・経営者の軍師として動くこともあれば、軍師の軍師役を果たすこともある立場ですが、本日はそれぞれの現実を俯瞰しつつ、両者の間に存在する「難しさ」に光を当てたいと思います。切り口としては、企業サイドに立ちながらの記述となります。

さて、外部のプロの活用がうまくいっていないケースにもいろいろあります。課題そのもののハードルが高く、結果が目に見えるまでには時間を要するということも少なくありません。しかし、今回光を当てたいのはそういうケースではありません。そもそも、コンサルタントの選定、コンサルプログラムの設計、日々発生する判断の精度が低すぎるが故に、最初からボタンを掛け違えているというケースを紐解きたいと思います。

そういう現実、これまで何度も目にしてきました。多額のコンサルフィーを支払い、時間もかけて取り組んだ結果、最後に残ったのは傷ついた財務と疲労感・徒労感、そして現場から経営陣への不信感だけだったというケースも見てきました。その結果、疲れ果てた状態で「今度こそは何とかしたくて」と相談に来られる方もいらっしゃいました。

あるとき、何故そんなことになったのだろうか?と、話を伺いながら紐解いていくと・・・

という状況が浮かびあがってきたのです。

では、その難しさとは何でしょうか? 

原因はひとつではありませんが、本日は以下のことに焦点を当てたいと思います。

(専門性が高ければ高いほど)企業側は専門家を評価することが不可能だという現実

会社として外部のプロに何かを依頼する際、殆どの企業や経営者は「誰に頼もうか?」「どこの会社がいいだろうか?」「どんなコンサルタントが役に立つだろうか?」と考え、時には直接面談したり、提案書や見積をもらい、内部で評価・選別して決断するはずです。

しかし、残念ながら、その評価・選別の精度は相当に低いものになってしまいます。精度が高いわけがないのですね。厳しいことですが、それが現実です。

外部のプロは「専門性」として、該当テーマへの相当な知識・見識・経験値を有しているかもしれません。しかし、評価・選別する側は「素人」です。自分たちが持っていない専門的スキルや能力を得るために外部のプロに委託するわけですから、それは至極当然です。

しかし、企業としては、その状況下でも何らかの判断基準を設定し、決断しなければなりません。その結果として、中身がわからないまま、「資格・所属・肩書・過去の実績・評判や知名度」で評価・選別するという思考行動に陥ります。判断基準としてはかなり危うさを孕むものとならざるを得ません。

また、動き出してからも、日々の助言や動き、提案が本当に自社のためのものなのか、そのプロ側の利害関係に根差したものなのかを見極めることも(素人にとっては)困難を極めます。

結果的に、企業側はプロの選定と業務推進上のジャッジの誤りを積み重ね、良からぬ結果を導くわけです。例えば、この数十年ほどの中ではIT等のシステム開発・設備投資が絡む事案において、完全素人に近い企業側が意味を理解できないまま多額の投資を続けてしまったという事例をよく目にしました。これからのテーマでいえばAI投資が絡むと同様のことが繰り返されるかもしれませんね。

では、企業として、その難しさにどう対処すればよいのでしょうか?

ここでは3つの方策を取り上げたいと思います。

まず、1つ目は「セカンドオピニオンの活用」です。複数の専門家の助言、提案をもらい、その対比の中で助言・提案の意味を紐解きます。視野を広げ、中身の解像度を高めるための仕掛けとして、複数の専門家の声を活用するということです。ただし、中身の是非については多数決で決められるようなものではなく、そうしたセカンドオピニオンを活用するためにも「一定水準以上の知識・見識・経験値」が企業側に必要となることは言うまでもありません。

2つ目は「専門家選定及びその助言・提案への評価」に幅広く協力してくれる有識者・プロを半歩社内の社外アドバイザーとして抱え、日頃から経営会議等に参加してもらっておくという方策です。経営全般に高い見識を有し、かつ、半歩社内・半歩社外の立場でバランスよく継続的につきあってもらえる人を捕まえることができれば、自社(社内スタッフ)が持ちえない知識・見識を活用できるでしょう。ただし、それに見合う力を有しつつ、自社と相性の良い人と出会い、見出すことは簡単ではありません。その人への評価そのものが(同じ構造で)難しいですから。最近では、知名度の高い人物を社外役員としているケースもありますが、そこに実効性が期待できることはとても少ないように思えます。趣旨として、知名度など何の役にも立ちませんから。現実的には何かの案件で一緒に考え、動く機会をもち、相互理解を深める中長期的な関係性の中で見極めるしかないでしょう。

3つ目は、そうした2つの方策を支えるものとして必須のものとなります。それは『学ぶこと』に他なりません。専門家にならないまでも一定以上の知識・見識を獲得するべく、経営者や会社幹部が勉強することです。ある程度中身が理解できなければ、プロとの会話さえ成立せず、仕事になりません。そして、その学びに取り組む中で前述の2つの方策につながる出会いや縁も得られる可能性があります。現業の範疇でしか生きていない日常の中からはそうした縁さえ生まれません。外部に依頼するから自分はわからずともOKということは決してないわけですね。

以上、今回は『外部のプロ活用時の宿命的な難しさ』に焦点を当てながら、その低減に向けた方策の例を挙げてみました。日々、経営者や企業幹部の方、そして彼らをサポートするプロ稼業の方たちと対話する中で実感していたこと(もちろん自分自身が当事者としても体感していたこと)でもあります。

難しいことだけれど、それを意識化できれば何らかの方策は見つかる。今回のテーマもそういう問題の1つですが、そもそも意識できていないままで頑張ってしまう人が少なくありません。それを防ぐ一助になれば幸いです。

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