toggle
2018-11-30

幸せが持続する社会

先日、鎌倉投信を立ち上げたことで有名な新井和宏氏が設立されたという「株式会社eumo」のお披露目会にお邪魔してきました。前職時代からお世話になっている方が立ち上げにかかわっているということでお声がけいただき、興味深くお話を伺ってきました。

社名であるeumoとは、「Eudaimonia(持続的幸福)」の略で「ユーモ」と読むそうです。

「共感資本社会の実現を目指す」という同社は、人や社会が自己実現や生きがいを得られる活動を促し、循環するような経済的・社会的インフラとなるプラットフォームを独自に創り出そうとされているのだと(当日のお話を伺う中で)私は理解しました。

新井氏は当日の話の中で「おカネをデザインできる時代になった」とコメントされていました。

確かに、仮想通貨の技術にヒネリを加えた何かを組み立て、通貨の三大機能と言われる「価値の尺度・交換・保存」にあえてメッセージ性を加えた価値交流が可能な経済・社会・文化圏を構築することができれば、従来の資本経済社会の力学とは違った構造が可能になるのかもしれません。

金融の世界で生きてこられた新井氏たちと、本件に共感し、動き出そうとしている方たちの知見が結集されることで、今の時代だからこそ求められ、可能となる仕組みが世の中に加わることを期待したいですね。

こうした動きの前提にあるのは、「持続可能な社会」「ソーシャルイノベーション」「ソーシャル・アントレプレナー」「SDGs」・・・今までの社会が構造的に生み出した大きな副作用に対しての反動、その歪みを是正する社会全体の修復機能(本能?)と言えるのかもしれません。

短期的な収益の最大化を目指し、あるいはそれにコミットした企業行動は、時として歪みを生じさせ、その実害への責任を未来に先送りし、私たちが生活の基盤とする社会を大きく傷つけます。そこに牽制機能が働き、修復の動きが発生しない限り、この社会は壊れてしまいます。

 

今後、同社がどんなメッセージを持つプラットフォームを構築していこうとしているのか。縁ある方も中核でかかわっていらっしゃることもあり、引き続き注目させていただき、そこから私自身も学ばせていただきたいと思います。

新井氏の知名度、テーマの社会性もあって、おそらくは人・モノ・カネが短期間で集まるのかもしれません。

ただし、どんなものでもそうですが、最初は「近くにいれば儲かるのではないか?」という打算で群がる人も多いものです。社会がそうなっているわけですから。実際、社会起業家として扱われる人の中には、人やお金を集めるために「社会課題の解決」という衣を便利に使っているだけという人も少なくないのでは?という印象もあります(何名かにお会いした中での印象なのでサンプルは少ないですが)。

だからこそ、どんなメッセージを込め、それをどんな形で具現化していくのかの打ち手が重要ということでしょうか。

 

私が仲間たちと立ち上げてきた軍師のコミュニティでは、金融面のインフラにまでは踏み込めていませんが、その中核に「私益・共益・公益」のバランスや重なりを重視するという考え方を置いています。

軍師アカデミーは、団体理念の中で「軍師力を社会の隅々にまで浸透させ、人や組織がお互いの価値を高め合い、成長と幸福の連鎖を巻き起こす未来の実現」を掲げています。

その基盤となるコミュニティの中軸には「私益・共益・公益」という3つの視点での便益が良い意味で循環することを置き、それこそが持続性のカギを握る要因だと考えています。

*「私益・共益・公益」については、「ゴーン氏事件に想う:仕事の目的」でも触れています。この「仕事」を「人生」と読み替えると、そのまま私たちが大切にしていることに置き換わります。「組織」を「社会」と読み替え、個人ではなく企業の視点でとらえると、持続可能な会社経営の根幹として読み替えることもできます。

アプローチ法は異なりますが、根底にあるものには共通点も多いと感じた「株式会社eumo」の動き。

私たちよりも格段に目立つ動きでもありますし、その動向を注視し、学ばせていただきたいと思います。

関連記事