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2019-03-22

調和が生み出す美しさ

数日前、イチロー選手の姿に「美学」を感じるという投稿をしました。そして昨日、ついにイチロー選手「引退」の瞬間が訪れました。しかも最高に美しい形で・・・。

イチロー選手がライトのポジションにつき、そこで交代を告げられる。ベンチに戻る彼をチームメイトが迎え、球場全体が試合中にもかかわらず彼の現役最後の瞬間に光を当てる舞台となりました。本当に、前代未聞の美しい幕引きだったのではないでしょうか。

試合終了後のインタビュー内容からは、彼の自己認識力は極めて高く、自分というものを知り尽くしてマネジメントしてきたことが伝わってきます。だからこそ彼は周囲と自分を調和させ、「イチロー」という存在を光らせ続けることができたのでしょう。

自分という人間の特性を的確に理解し、周囲からの期待や要求と自分との間にあるギャップを感じ取る。自分という存在が周囲に与える影響を熟慮しながら努力し続ける。それができなければ、どんなに突出した才能を有する個人であっても、チームプレイである野球の中で必要とされ続けることは難しいのでしょう。さらにいえば、プロ競技を経営する球団側から存在を評価され、彼ほどの特別な立場を獲得することもできなかったはずです。

昨晩の「美しき交代の瞬間」が実現したのは、関係者全ての想いが1年間という長い時をものともせずにつながり続け、調和していたからなのでしょう。大人の事情なども含めて想像すると、そう思わずにはいられません。何か1つでも大切なピースが欠けていたら実現できない「奇跡の瞬間」、鳥肌がたつほど美しいシーンでした。

個人的には、イチロー選手は何となく孤高のイメージがあり、ひたすら自分流で道を追い求めているのかなという印象を持っていました。しかし、実際は異なるようです。

記者会見の中で彼は「ある時までは自分のためにプレーすることがチームのためにもなるし、見てくれている人も喜んでくれるかなと思っていたんですけど、ニューヨークに行った後くらいからですかね、人に喜んでもらえることが一番の喜びに変わってきたんですね」と語っていました。

やはり、彼の美学は独りよがりなものではなく、周囲との関係性を踏まえたうえで貫かれているものだったようです。そのことをあの「美しき交代の瞬間」が示していたような気がします。

周囲との関係性を大切にした本物の美学を持ち、きちんと自己認識できる人。だからこそ、自らの現役選手としての終焉を自ら判断し、関係者とともに美しき幕引きを実現できたのでしょうね。

的確な自己認識と、周囲との調和も含む「美しさ」の実現。

決してプロスポーツの世界だけの話ではなく、社会の至る場所で求められるものですが、それを実現できる人はとても少ないのが現実です。

イチロー選手の凄さを感じます。

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