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2018-11-20

ゴーン氏事件に想う:仕事の目的

オフィスでのミーティングを終え、もろもろ整理しているとき、驚きのニュース速報が流れてきました。昨日のことです。そう、日本中、いえ世界中を驚かせた日産のゴーン氏逮捕の一報でした。

何?どういうこと? と驚いた人が多かったのではないでしょうか。私もニュース番組をハシゴしながら、日産社長による会見生中継を追いかけました。

かつて上場企業で経営ガバナンスに絡む仕事や広報担当もしていたこともあり、その状況からさまざまな仮説が瞬時に頭の中に浮かびました。会見の状況、社長の話す様子のひとつひとつから、何が起きているのか(何をしようとしているのか)、背景で誰がどのように動いているのか、さまざまな推測が成り立ちます。ここで安易にそれを書くことは控えますが(苦笑)。

 

さて、少し切り口を変えたお話です。私はこうした「組織の混乱」と向き合う時に幾つかの角度から光を当てていきます。例えば、「この人は何のために仕事をしているのだろうか?」「この人が大切にしているリターンは何だろうか?」ということ。

もちろん、人は1つの目的だけで仕事をしているわけではなありません。いろいろなことを同時に獲得することを期待しながら仕事しています。その働く目的、期待するリターンは、どんな「私益」、どんな「共益」、どんな「公益」に属するものなのだろうか?と分類しながら整理していきます。

「私益」とは、個人として求める何か。報酬や地位のようなものであることもあれば、何らかの精神的充実もあるでしょう。とにかく、一人の独立した人間として幸せになるためのリターンを意味します。

「共益」とは、ともに働く仲間たちとともに育み、共有することができる何か。自分だけではなく、むしろ自分には直接の関係がなくとも、仲間たちと助け合ったり、支え合うための源泉として蓄積されていくようなリターンです。

「公益」とは、その組織全体が存続し、社会から必要とされ続けるという意味で生み出していく成果であり、組織として受け取るリターンです。

多くの人は、それぞれの価値観に根差し、3つの益の間のどこかに重心をおいて動きます。また、3つの利益は時として表裏一体のこともあり、重なり合う部分も少なくありません。その重なりが大きく、メンバーひとりひとりが自分も幸せになり、仲間の幸せにも貢献し、組織の成長にも寄与している構造でメンバーが仕事をしているとき、その組織はとても健全で強い力を発揮するようになります。

ところが、それが崩れてくると(重心が偏ったり、不安定になると)・・・お互いの益が相反関係となり、食い合う構造だけが強くなっていきます。会社の利益、仲間の利益を食いつぶしてでも自分の利益を確保する・・・そんな個人が目立ち始め、それらが争いはじめ、気が付くと負の連鎖で全ての価値が傷ついていきます。

 

今回の日産の事件でも、そこに登場する人たちは、どんな益のために頑張っているのだろうか?と注視しています。

おそらく、現状はなかなか厳しい状況なのではないかと推察されます。もちろん、ピンチの時に潮目が変わり、いつの間にか危機を脱するために関係者の利害が一致し、好循環の流れが生まれる可能性もあります。果たしてどうなるか・・・多くの方の運命を左右するであろう大きな話です。好転してもらいたいですね。そう願うばかりです。

 

↑ 軍師アカデミー教材より。軍師内でも共有している、組織マネジメントの核心をつく視点だと私は思っています。

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