素人ならではの視点
先日、「事業ドメイン ワークショップ講座」という企画に参画し、講師役を務めさせていただきました。
主催したのは「組織の学校」、軍師アカデミー修了者でもある北野清晃氏が校長となって立ち上げた団体です。
軍師アカデミーが共催という形をとり、軍師流の事業戦略の視点と彼らが得意とするワークショップ技術を組み合わせた挑戦的な企画となりました。
事業ドメインとは「ビジネスにおける土俵」を意味します。
どんな土俵で戦っていくのか?
その土俵で生き残ることはできるのか?
生き残るために誰と戦い、誰と助け合い、何を自分たちの強みとして活かすのか?
千変万化する環境の中で熟考を重ね、実践を積み重ねながら描いていくべきビジネスの肝となる線引きにあたるのが、事業ドメイン策定です。ここが曖昧なままで戦うことは、負け戦となるべくして戦っていることになってしまいます。
そんな重要なことを、自社と無関係な人が集まるオープン形式のワークショップ講座でできるのか? 開催にあたっては、当然のことながらその懸念もありました。
しかし、結論としては・・・安心できる環境を整えることさえできれば、ワークショップ技術を組み合わせた中で事業ドメインをチェックし、開かれた場で磨くというプロセスは大いに有効なものだと確信する結果となりました。
自社と無関係な人とは、言い換えるならば業界や仕事についての素人さんです。
その素人さんが、素人だからこそのゼロベースの視点で一生懸命に「ああだ、こうだ」と自社に素朴な感想や意見を出してくれるわけです。
ただし、素人さんは自社の世界とは縁遠くとも、それぞれの世界で別のビジネスに携わり、さまざまな経験値や技術、視点を持っているわけですね。その人たちが何にも縛られることなく「あるべき論」をゼロベースで考え、指摘する意見の中には、視野が狭くなっている業界関係者が気づかない本質が隠れていたりするわけです。
そもそも、ビジネスの形とは、現実の社会とのすり合わせを通して磨くものであり、クローズドに考えるよりも、オープンな場で磨き続けるほうがスピード感を高めて展開することができるという側面もあります。
また、自社のドメインに光を当てるだけでなく、他社・他業種のビジネスと「素人」ながらも真剣に向き合い、その構造の一端に触れさせてもらうことは、普段の仕事で得ることが難しい視点を得られる貴重な機会だったでしょう。
かつて、私が社会人として仕事の基本を学び始めた頃、会社で上司や先輩に「素人目線で必死に考え、動く」ことの大切さを教わったことがあります。
初めて行うことについて、自分が素人なのは当然。しかし、素人だからこそ見えるものもある。先入観もない。純粋な素人として「あるべき姿」をゼロから考え、何をするべきかを見つけ、それを仕事として組み立てていけば、先行する人や会社以上のことができるようになる。
そんな仕事の原点を思い出した企画となりました。
有効な場であるという感覚を得ましたので、こうした取り組みも今後強化していきたいと思います。